私は中学、高校と吹奏楽部に所属しクラリネットを吹いたり指揮をしたりしていた。高校3年生のときには、クラリネットパートはレベルの高い後輩で十分人数が足りていたし、高3になって急に指揮をやりたいと言い出した同級生がいて、彼から低音が足りないから…
10年前の岩波の「図書」(2011年6月号18-20頁)にこんな記事が出ていた。 阿部公彦(まさひこ)著「しようと思ったことができない病」「...ひとりで運転しているとどうしても、CDの設定だの通算走行距離距離だの信号機の形だの道路沿いのガソリン価格競争だの…
驚いたことに、ごく最近、著名な応用数学者でベストセラー作家でもある米国コーネル大教授のSteven Storogatz氏のYouTubeでの人気講義で私の1995年の論文 Geometrical Formulation of the Renormalization Group Method for Global Analysis | Progress of T…
10年前の4月28日に母が亡くなった。2011年の6月初めに四十九日の法要があった。母のことを書き出せばきりがないし、ここではそういう母への個人的な想いを書く場所ではないだろう。以下では、そのとき法要の様子を観察して分かったことや考えたことを書いて…
10年ほど前、私の主催する理論物理の研究室に得度もしているお寺の子弟の院生がいた。彼は、すでに法事では檀家回りを手伝っている一人前の僧侶でそのうち浄土真宗のお寺を継ぐことなっている、とのことだった。お浄土は西国にあるというから彼の名前を仮にW…
60年代と80年代後半に生まれた私と同じ大学出身の物理研究者と話していると、どういう話の流れか、彼らが60年代から70年代にかけての「学生運動」を活字でしか知らないことが分かった。それでは、と私の実体験を語り出したら長い話になってしまったことがあ…
以前ブログか twitterで、 E・H・カー著「カール・マルクス」 が、「マルクス主義」がマルクスの若いときに構成された未熟な思考体系である、と明快に批判している、という記事を読んだ。そこで興味がわいてすぐに図書館から借りてきて読んだことがある。こ…
10年近く前、大阪天王寺にある大阪市立美術館で鑑賞したボストン美術館所蔵の日本美術の展覧会は衝撃的だった。長谷川等伯、光琳、若冲、そして蕭白。蕭白の巨大な雲竜図には度胆を抜かれた。また、大胆でスピード感のある筆致の商山四皓図屏風にも感銘を受…
学生時代から30歳になったころまで岩波書店発行の月刊誌「世界」を定期購読していた。そのころよく読んだ常連の寄稿者は桑原武夫、丸山眞男(真男)、加藤周一そして伊東光晴らであった。 私は桑原武夫は偉い人だと思い私淑した。その後、岩波から出た10巻の…
ディラックの伝記 https://www.amazon.co.jp/gp/product/0465022103/ref=dbs_a_def_rwt_bibl_vppi_i1 を読んだのはもう11年も前だったでしょうか?新聞に書評が出ていて、後で書くようなディラックの人格(発達障害の可能性)についての興味深い「見立て(obs…
2009年の5月1日の日記に以下のようなことが書かれていた。全然記憶に残っていなかった。 %%%%以下引用%%%%% 警告レベルがフェーズ5に上がり、各国で人から人への感染が広まっている。終に、大学から通達。感染者の出ている国への渡航取りやめを強く勧める。…
私は逆まつ毛がある上にドライアイなので、パソコンを使う仕事を長時間やっていると目が使い物にならなくなる。若い頃はその上乱視がひどくて、体は元気なのに眼性披露で何もできない、ということもあった。乱視の方はコンタクトレンズにして問題がなくなっ…
天野清著「量子力学史」(自然選書 中央公論社 1973年刊)を再読したのは10年ほど前だった。(ただし、付録を除く。)やはり、量子力学の講義の準備のためだった。 以下のセクションが量子力学の核心に当たるところであろう。すなわち、 §16 量子力学におけ…
10年ほど前に古本屋で買った3冊の量子力学の本の想い出と感想です。 1冊は量子デバイスへの応用を念頭においた量子力学の教科書。「通常の量子力学の教科書は原子物理や原子核物理学を題材にしており、量子(ナノ)デバイスへの応用を考えると不満が残る構…
量子力学の講義をしていたころ、朝永の第二巻を再読した。残念ながら、今や(今も?)朝永の第二巻を読んでいる人はあまり多くないと思う(実際、私の恩師も読んでいなかった)が、私は大学院入学前に読んで感動した記憶がある。すこし読み返して、この本は…
母校とその前身の旧制中学校からは、正岡子規、高浜虚子などの俳人や小説家の大江健三郎が出ている。伊予はどういうわけか文弱の土地である。四国の中で唯一総理大臣が出ていない。政治のような硬派なことは苦手なのである。 私が高校1年生のとき、旧制中学…
量子力学の講義を始めたころ、基礎固めのためヒルベルト空間論関係の数学の本を読んでみた(「微分方程式と固有関数展開」(小谷眞一、俣野博著、岩波書店)。昔知っていたことの整理程度にはなったが、始めて知る内容になると興味が続かなくて眠たくなった…
十数年前の年末、BSで2006年ベルリン・フィル、シルベスターコンサートを観た/聴いた。指揮はサイモン・ラトル。交響曲はリヒャルトストラウス関係。これはほとんどスキップ。モーツアルト、ピアノ協奏曲20番ニ短調、K466はすべて聴いた。ピアニストは…
以下、引用があって長いですが、高山秀三京都産業大学教授による、ニーチェについての興味深い指摘があります。 ニーチェの著作は読んでいないので知らなかったのですが、ニーチェが女性蔑視の言葉を書き連ねている、ということを聞いて少しひかかるものがあ…
元読売新聞記者で現在早稲田大学教授の 尾崎真理子さんの書いた「大江健三郎全小説全解説」という、 とんでもないタイトルに興味をそそられ手に取って読んでみた。 もともと大江健三郎は一頃全部ではないがよく読んでいたので、 興味津々の事項が続々と出て…
このブログはずっとお休みしていた。別に病気で臥せっていたわけではなく、定年後も続けている専門の共同研究3件、本執筆、俳句作り、そして孫の相手と、実は思いがけなくもかなり忙しい生活をしている。それでブログを書く精神的余裕がなかった。 書きたい…
非常事態が宣言され家に閉じこもることが奨励されると、目に見えないウイルスへの情緒的な恐れだけに囚われてしまいそうな今日この頃。今こそゆとりを持ち、平常心を取り戻しましょう。その気分にぴったりの(と自分では思う)の俳句を昨年作っていました。…
昔、たぶん1980年代、テレビの企画で開高健が文壇の先輩で釣り仲間でもある井伏鱒二を自宅に訪問する番組が流されていた。そこで開高健意を決したように作家としては致命的とも思える悩みを打ち明け井伏に救いを求めだした。その会話は以下のような内容であ…
以下の文章は、俳句の専門家からは素人のお門違いの妄言との誹りを受ける部分があるかもしれないが、誓子の句を枕にした私の学問観として読んでいただければ幸いである*1)。 「学問」における孤独 高橋透水さんという方のブログ https://blog.goo.ne.jp/new-…
「橡」同人、俳人協会会員の三谷みゆきさんの初句集「初手斧」(令和元年文月、Baun 発行)を通読したいへん感銘を受けた。まず印象に残るのは、句集全体を貫く上品さと格調の高さである。そして断続的に句集全体で取り上げられ印象に残るのが、母上への敬慕…
母が詩吟をやっていた影響なのか、漢文が好きだった。高校で杜甫の「春望」を習ったときは、母が吟じてくれたりした。母は私の漢文の参考書を見て、絶句や律詩の説明がとても勉強になると、私よりも一生懸命読んでいた。詩吟の生徒を持つようになり、吟じ方…
量子力学においてもニュートン力学と同様時間反転不変性が成り立つ。古典力学ではニュートンの運動方程式が時間について2階なのでt-->-tの変換に対して不変である。これは次のことを意味する: A) r(t)が解(自然界に実現する)なら、r_{rev}(t)=r(-t)も解で…
いきなりあまり馴染みのない「フレドホルムの交代定理」とか言われると何のことかと思うかもしれないが、これは連立方程式が一意に解けたり不定な解をもつ場合を場合分けする話である。 中学校で習う1次方程式 3x=2 の解はx=2/3 である。それでは、文字にし…
京大経済学研究科教授の依田高展さんによると、最近大学上層部からやたらと「面白い」を押しつける風潮があるらしい。依田さんによれば、これは %%% 「面白い」をはき違えており無理・無駄なことだ。真の面白さは不断・普段のつまらない日常の中で曇天から太…
以下の文章は、2003年、国立大学が「法人化」される前に書いた私の見解である。「大学改革」の具体的内容ではなく、その主体となるべき学問研究のプロ集団たるべき大学人の力量と見識についての感慨になっている。ここで披瀝したobservationの内容と悲観…