10年ほど前に古本屋で買った3冊の量子力学の本の想い出と感想です。
1冊は量子デバイスへの応用を念頭においた量子力学の教科書。「通常の量子力学の教科書は原子物理や原子核物理学を題材にしており、量子(ナノ)デバイスへの応用を考えると不満が残る構成」、というようなことが書いてある。これは、私自身感じていることであった。
たとえば、1、2次元のポテンシャル問題、井戸型ポテンシャルなどをシュレーディンガー方程式の練習問題としてやるが、その物理的リアリティは何だろう。今や、そのようなポテンシャルが量子デバイスとして作られ、その様々の特性が生かされようとしている、ということではないか? この教科書はそういうことを書いているらしい。
残りの2冊は2巻本の入門書。最初の導入のところを詳しく読んで後はざっと目を通すだけだったが全部「読んだ」。
「ド・ブロイは物質にも波が付随していると夢想した。」、
という趣旨の文書が2カ所あった。デバイはド・ブロイの仕事を
「子供じみた」、
と評したらしい。その批判を受け、ちゃんと振幅も考慮し、波動方程式のレベルで「大人の議論」をしてみせたのがシュレーディンガーである。ド・ブロイの「物質波」のアイデアも、電子線による干渉縞発生によって実験的に検証され、ノーベル賞を受けている。つまり、子供じみた「夢想」が出発点となり、2つの ノーベル賞に繋がったのだ!
そういう「おいしい」話が今の時代にもあるだろうか? 何かそこに問題はあるが曖昧模糊としてどこからどう考え、どう概念的に整理してよいかも分からない。そんなとき、「こんなのどう?」と言ってみる。ほとんど計算せずに。力のある理論家や実験屋さんがそれを深め、検証実験をしてくれる。すると大当たり! そんな問題。 ダークエネルギーの起源とかの問題どうかな?また、宇宙の物質と反物質の非対称の起源。たぶん、ニュートリノセクターのCPviolationが原因なのでしょう。それでは、ニュートリノ混合の起源は? あるいは、関連して「世代」の起源は? これらのどれかに対して「子供じみた」素人の発想で、「こんなんじゃないかなあ?」と言ってみる。しかし、どこかの雑誌に載せてもらえるぐらいには上手に言わないといけない。
教訓は、
「子供じみた」とか「馬鹿な」質問、アイデアをまずはどんどん勇気をもって出していきましょう、
ということではないだろうか?