物理屋の不定期ブログ

読書感想を中心とした雑多な内容のブログ。拙著「量子力学」に関係した記事も含む。

お寺の子弟の院生との会話の思い出:「他力本願」、法然と親鸞、明治維新

10年ほど前、私の主催する理論物理の研究室に得度もしているお寺の子弟の院生がいた。彼は、すでに法事では檀家回りを手伝っている一人前の僧侶でそのうち浄土真宗のお寺を継ぐことなっている、とのことだった。お浄土は西国にあるというから彼の名前を仮にWest(西)君、略してN君としよう。

 あるとき、N君を囲んで浄土真宗親鸞法然蓮如、浄土宗をめぐる話に花が咲いたときがあった。と言っても、もちろん、日頃のこちらの疑問や一知半解で知っていることを彼に尋ねる、というのが主なことの成り行きであった。私は最初に職を得た大学が宗派関係の大学なので、少し興味を持って仏教や浄土真宗親鸞について少し勉強したことがあった。もう二十年ほども前のことであったが。

 ちなみに、そのときの「おしゃべり」にはドイツ人の学生がいつのまにか部屋に入ってきて聞き入っていた。彼は日本が大好きで、ドイツの大学に籍があるが、そこの教授と日本の教授との共同指導を受けることができる、という制度を使って我々の研究室に属していた。彼は日本語ペラペラで普通の院生よりも難しい漢字を知っていた。

 私が生半可な知識で、

「浄土宗と浄土真宗の違いは自力本願か他力本願の違いだ。」、

というようなことを口走ったら、N君に、

    「自力本願」ということはあり得ません、

とすぐさま訂正された。「本願」とは阿弥陀様の願いだから。

 N君によると、浄土真宗の開祖親鸞法然と別の宗派を開いたという自覚はなかったはずだそうだ。

 N君からは話の流れの中で、明治維新で活躍した西国の武士達は浄土真宗に関係した人たちが多いのだ、ということを教えてもらった。初めて聞く話。浄土真宗のお寺、特に、関西の浄土真宗のお寺ではそう言い伝えられているようだ。討幕運動や明治維新の事業に浄土真宗のお寺が、あるいは教団を上げて(?)何等か関与したのかもしれない。興味深い話だが、そのようなことはどこか歴史書に書かれているのだろうか?また、そのとき明治新政府の行った廃仏毀釈との関係が気になることである。しかし、その後この問題について追及して調べたりはしていない。今思い出したので、今度調べてみよう。

 

[追記1] 明治維新における山口県(防長)本願寺派僧の貢献に関して以下の記事を見つけた。執筆者は(元)龍谷大学教授。

www.yamaguchibetsuin.net

[追記2(2021/05/16)]「カミとホトケの幕末維新」(法蔵館)では「勤王僧」のことが取り上げられているらしい。

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