物理屋の不定期ブログ

読書感想を中心とした雑多な内容のブログ。拙著「量子力学」に関係した記事も含む。

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

「秀才」の陥穽

院生の頃言われたのは、馬鹿な質問ができないといけない、ということ。これは二重の意味があって、主体的に、馬鹿な質問かなと思っても勇気を出して質問できるぐらいでないといけない、ということと、馬鹿な質問を歓迎する雰囲気を作らないといけないという…

大江健三郎「万延元年のフットボール」についての思い出

500ページ足らずの(大江の作品ではない)小説を3年がかりで読んだ。達成感はあるが、何がいいたいのか分からない。人生の終わりを切実に感じている老人の生き方を描いていることは分かった。その点で年齢を自覚するものとして考えこむときが何回かあった。し…

天野清「量子力学史」、カント

天野清著「量子力学史」(自然選書 中央公論社 1973年刊)を読み終えた。ただし、付録を除く。筑波出張とその後の置き忘れというトラブルのために、その読みが中断していたのであった。今日読んだところは量子力学の核心に当たるところであった。§16 量子力…

ルネ・レイボヴィツ

NHKFMでルネ・レイボヴィツ指揮のベートーベンの9番を聴いた。1昨年末のことだった。それがレイボヴィッツを初めて知ったときだった。 ローマ・フィルハーモニー管弦楽団 「交響曲 第9番 ニ短調 作品125“合唱つき”」 (ソプラノ)インゲ・ボルク、(アルト)ル…

E・H・カー「新版 カール・マルクス」(未来社、1998)

あるブログかtwitterを読んでいたら、50年ほど前に訳が出たE・H・カーの「カール・マルクス」が、「マルクス主義」がマルクスの若いときに構成された未熟な思考体系である、と明快に批判している、というようなことを書いてあった。このような観点からのマ…

アニメ映画「この世界の片隅に」

「この世界の片隅に」を観た(今年始めのこと)。母と同世代の主人公に感情移入し、戦争時代のしんどい暮らしが痛みのように伝わってきた。娘たちも嫁いでいる。主人公が母とそしてときには娘たちと二重写しになる。主人公の戦時下の困難な環境の中でのけな…