物理屋の不定期ブログ

読書感想を中心とした雑多な内容のブログ。拙著「量子力学」に関係した記事も含む。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

天野清「量子力学史」:量子力学における観測と因果律

天野清著「量子力学史」(自然選書 中央公論社 1973年刊)を再読したのは10年ほど前だった。(ただし、付録を除く。)やはり、量子力学の講義の準備のためだった。 以下のセクションが量子力学の核心に当たるところであろう。すなわち、 §16 量子力学におけ…

初等量子力学とナノデバイス、そしてド・ブロイの「子供じみた発想」

10年ほど前に古本屋で買った3冊の量子力学の本の想い出と感想です。 1冊は量子デバイスへの応用を念頭においた量子力学の教科書。「通常の量子力学の教科書は原子物理や原子核物理学を題材にしており、量子(ナノ)デバイスへの応用を考えると不満が残る構…

朝永振一郎著「量子力学」第二巻とド・ブロイの物質波の位置づけ

量子力学の講義をしていたころ、朝永の第二巻を再読した。残念ながら、今や(今も?)朝永の第二巻を読んでいる人はあまり多くないと思う(実際、私の恩師も読んでいなかった)が、私は大学院入学前に読んで感動した記憶がある。すこし読み返して、この本は…

50年前の松山東高校創立記念行事:大江健三郎と喜安善一氏の想い出

母校とその前身の旧制中学校からは、正岡子規、高浜虚子などの俳人や小説家の大江健三郎が出ている。伊予はどういうわけか文弱の土地である。四国の中で唯一総理大臣が出ていない。政治のような硬派なことは苦手なのである。 私が高校1年生のとき、旧制中学…

ヒルベルト空間の「可分性」:学生時代の苦い思い出

量子力学の講義を始めたころ、基礎固めのためヒルベルト空間論関係の数学の本を読んでみた(「微分方程式と固有関数展開」(小谷眞一、俣野博著、岩波書店)。昔知っていたことの整理程度にはなったが、始めて知る内容になると興味が続かなくて眠たくなった…

内田光子の思い出

十数年前の年末、BSで2006年ベルリン・フィル、シルベスターコンサートを観た/聴いた。指揮はサイモン・ラトル。交響曲はリヒャルトストラウス関係。これはほとんどスキップ。モーツアルト、ピアノ協奏曲20番ニ短調、K466はすべて聴いた。ピアニストは…

ニーチェのミソジニーは自己嫌悪の表現らしい

以下、引用があって長いですが、高山秀三京都産業大学教授による、ニーチェについての興味深い指摘があります。 ニーチェの著作は読んでいないので知らなかったのですが、ニーチェが女性蔑視の言葉を書き連ねている、ということを聞いて少しひかかるものがあ…

尾崎真理子著「大江健三郎全小説全解説」と大江本人の「私という小説家の作り方」

元読売新聞記者で現在早稲田大学教授の 尾崎真理子さんの書いた「大江健三郎全小説全解説」という、 とんでもないタイトルに興味をそそられ手に取って読んでみた。 もともと大江健三郎は一頃全部ではないがよく読んでいたので、 興味津々の事項が続々と出て…