物理屋の不定期ブログ

読書感想を中心とした雑多な内容のブログ。拙著「量子力学」に関係した記事も含む。

2023-01-01から1年間の記事一覧

8年前のクリスマスの約束:小田和正と和田唱が歌った「恋のフォーチュンクッキー」の衝撃

今年は小田和正の「クリスマスの約束」がなくて残念だった。この歌番組は歌がうまい才能ある実力者が小田和正とデュエットしたり合唱・合奏するので、知っている歌を音楽的に深いところで堪能できる楽しさがあった。その典型が8年前、小田と和田唱が歌った「…

薪ストーブと囲炉裏のある喫茶店:サイフォン式コーヒーと炭火で焼くぜんざい用餅

先日、大津市田上地区桐生にある喫茶店、「ふくろう珈琲店」に行ってきた。マスターが定年後始めた喫茶店。そういう夫婦を特集する全国ネットのテレビでも取り上げられたことがあるらしい。それで以前から妻から行ってみようと誘われていた。実は、金、土、…

俳句誌「橡」2023年12月号に掲載されたいくつかの俳句の鑑賞

秋の暮みんな帰って終ひけり 大出岩子 (p.11) あれだけにぎやかだったのに、みんな帰ってしまった。事実をそのまま 記述した「写生」の極致のような句。しかし、突然の手持無沙汰と心に できた空洞の大きさにただ呆然とする様子がみごとに表現されている。 …

俳句誌「橡」2023年11月号に掲載されたいくつかの俳句の鑑賞

供花はけふ秋の白さの木槿かな 山下喜子(p.10) 亡くなった方への文字通り衷心よりの悼む気持ちが白秋の白と木槿の 白い色に象徴されている。秋の白さと言えば、 芭蕉の 石山の石より白し秋の風 がすぐに思い浮かぶだろう。この芭蕉の句は小松市にある高野 山…

鈴木大拙を「かじって」みたら、「もう読むのはやめよう」、と思った話

以前、白洲正子著「いまなぜ青山二郎なのか」白州正子「いまなぜ青山二郎なのか」、小林秀雄のこと - 物理屋の不定期ブログ (hatenablog.com) を取り上げたとき、そこでその「ニセモノ性」が彼ら仲間内で批判されていた小林秀雄に関する個人的思い出と現在で…

俳句雑誌「橡」令和五年九月号掲載作品抜粋とその鑑賞

走り茶と届く旅信も走り書き 山下喜子 (p.10) 「走り茶」、「走り書き」と明らかなことば遊び、その軽みがよい。 山羊の酥を伝ふ木簡緑さす 同上 山羊の乳製品という生命に関わることを書いた木簡にこれまた新生の息吹を感じさせる新緑が共鳴・協奏している…

20年前、宮崎、高千穂での虹の思い出

もう20年以上前、宮崎市で学会があった。大きくりっぱなコンベンションセンターだった。ある日自由時間ができた。秋晴れのいい天気だったので、急遽研究所の若いポスドクさん4人とでレンタカーを借りて自主エクスカーションうをすることになった。どこか決め…

トマス・S・クーン著「科学革命の構造: 50周年記念版 青木薫訳」のイアン・ハッキングによる「解説」を読んだ

Amazonにある宣伝文によると、この訳は、知識の進歩とは何かについての固定観念を抜本的に塗り替え、「20世紀の最も影響力の偉大な本」に数えられる名著の新版は半世紀ぶりの〈新訳〉である。また、新しい読者への案内としてI・ハッキングによる「序説━━五十…

物理屋の「けんか」の作法---小柴昌俊著「物理屋になりたかったんだよ」(朝日新聞社、2002年)再読

この本は、巻末にある尾関章朝日新聞大阪本社科学医療部長(当時)のあとがき「インタビューを終えて」によると、氏が2002年8月から9月にかけて小柴昌俊宅を訪ねて延べ約10時間にわたって行ったインタビュー記録をもとに(朝日新聞?)書籍編集部の赤岩なほみが…

大江健三郎「政治少年死す」(「セウ’’ンティーン」第二部)を読んだ!

1961年の雑誌「文学界」2月号に発表されて以来、2015年のドイツ語訳以外、一度も書籍化されることのなかった大江健三郎「政治少年死す」が大江健三郎全小説第三巻(講談社)に収録されている!ことを知り、図書館から借りてきて読んでみた。 まず、驚くのはこ…

大西明氏への弔辞       

大西さん、 大西さんとの別れがこんなにも早く、しかも私が見送る立場になるなどとは想像もしていませんでした。年明けから会うたびに痩せ、顔色を悪くされていく大西さんを見てこれはただ事ではないと心の奥では覚悟はしていましたが、、人生無常と言うほか…

西田太一郎著「漢文の語法」 (角川ソフィア文庫 )

#西田太一郎著「漢文の語法」 (角川ソフィア文庫 ) を買ってしまった。解説:齋藤希史、校訂:齋藤希史・田口一郎東大教授。 漢文の語法 (角川ソフィア文庫) 作者:西田 太一郎 KADOKAWA Amazon 高校時代漢文が好きだった私は1回生のときに司馬遷の「史記」を読…

The horrible remains of an inhuman act of exploding the nuclear bomb on innocent citizens recorded at Yorozuyo bridge, Hiroshima

In April, 2023, I attended a scientific conference held in Hiroshima, Japan, which was a well-organized and hence successful conference. On the road to the conference venue from my Hotel, I was to cross a bridge, called Yorozuyo Bridge (万…

岩波文庫版「M/Tと森のフシギの物語」を買った ---個人的悲報;物忘れの事例 ---

最近、物忘れのひどさを家内に指摘されることが多い私であるが、今日は我ながら唖然とするできごとがあった。ここにその「悲報」を報告し今後の戒めとしたい。 大江健三郎が亡くなって関連記事を読んでいるうちに、どうやらまだ私が読もうとして読めていない…

きさらぎの雪鎧ひけり會津墓碑 楓子(昼寝の会) 鑑賞

會津墓地は京都黒谷金戒光明寺にあり、ここは京都守護職會津藩の本陣でした。お寺のウェブページの解説 によると、当時京都は 「暗殺や強奪が日常化し、手のつけようのない状態になっていた」。 そこで、京の町衆は京都守護職としての會津藩士の入京を人垣を…

俳句誌「橡」令和五年一月号に収められた句の中で感銘を受けた句とその解釈

ビルの端を染めて始まる冬一日 三浦亜紀子 p.9 冬の早朝、日の出間もない朝日がビルの端を明るく照らしている美しい景。 忘らるる木陰に石蕗の花明り 宮口喜代子 p.11 普段なら見過ごしてしまう薄暗い木陰に明るく黄色い石蕗の花が咲いて鮮やかだ。 廃線の径…

読書メモ:山本みなみ「史伝北条義時」、沙川貴大「物理学最前線28 非平衡統計力学」、宮下精二「基幹講座物理学 統計力学」

ごく最近読んだ本で特に感銘を受けたものをメモしておく。 1. 山本みなみ著「史伝北条義時」(小学館、2021年) 承久の乱がなぜ起こり、その結果、上皇が3人も島流しにされるというようなことが現実となったのかに興味があったので、この本の終わり3分の1ほど…