大江、あるいは、長い時間かけて読んだ本についての短い覚書

500ページ足らずの小説(大江作品ではない)を3年がかりで読んだ。達成感はあるが、何がいいたいのか分からない。人生の終わりを切実に感じている老人の生き方を描いていることは分かった。その点で年齢を自覚するものとして考えこむときが何回かあった。しかし、全体としては、構成があまりにも難解。時間が経てば意味が分かるようになるのかもしれない。

ところで、何年もかかって読んだ小説はいままでに何作かある。最初は、「ジャン・クリストフ」。途中、合計1年ぐらいの中断を経て3,4年かけて読んだ。ずっと、感動していた。次は、「万延元年のフットボール」。学部時代に読み出して、読み終えたのは40歳台。大江がノーベル文学賞を取ったときをきっかけとしてだった。実存主義四国の森の土着の世界観、そして天皇制民主主義の主題が渾然一体となっていて、しかもその文章の圧倒的な詩的喚起力に翻弄されて、20歳、30歳台の私には読み進むことができなかった。各章の表題が谷川俊太郎の詩の一節から取られていた。今も思い出す引用されていた一節は「本当のことを言おうか!」。この表題だけで怖くてそれ以上読み進められなくなった。今ではちょっと信じられないが。大江の才能は散文による詩的イメージの構成の卓抜さにあると思う。